火災旋風の実験例 3     秘話 

 2013年5月 初の屋外実験 フジTV「ガリレオからの挑戦状」にて放送 
6月15日 フジTV「ガリレオからの挑戦状」で火災旋風の実験が放送された。大変分かりやすく、火災旋風の脅威が伝えられたのではないだろうか。
2種類の火災旋風を実験し収録した。実験動画 YouTubeで公開中
実験1.関東大震災時の両国被服敞跡で起こった広場に発生する火災旋風
 関東大震災時、両国被服敞跡の広場で起こり死者38,000人と言う大惨事を引き起こした火災旋風を模擬している。広場が火災で囲まれてしまうと、その内部では火災旋風が起こり易くなる。
5月23日 予備実験

 1m/s以下と風が弱く煙が上方に立ち上っているが、火災旋風は一度回り始めると、風が弱まってもしばらく回ることがある。
5月28日

燃料(n-ヘプタン)を入れたステンレスバット以外の場所からも火炎が立ち上り、一部は火災旋風となっている。
マネキンの高さ約1.7m

L字に配置したバットの端部で火災旋風が巨大化するのは現在までの風洞実験で確認されている

無断転載を禁じます。上記画像は著者が著作権を所有しますが、公開は番組を企画したフジTVの了解を信義上必要とします


実験2.ビル風により誘起される火災旋風
 被服廠タイプが強風では起こらないのに対し、ビル背面の渦は強風ほど起こりやすくなる。しかし、火災旋風はビル背面に限定され、巨大化するものの動き回ることがあまり無いので被服廠型ほど危険ではない
この映像はあまりにも衝撃的だったため、火災旋風というとこのタイプを連想する方が多くなっているように思える。これは実験用にできるだけ盛大に旋風を起こしたものであり、実社会では被服廠跡タイプを優先して想定すべきである。
高さ9mの衝立の高さを悠々超えた
風速2~4m/s 風向 南(写真右から左)
衝立一辺の長さ3m
火災旋風の直径は1.5~2m程度
風速2~4m/s 風向 南(写真右から左)
夜間の実験 
大きな渦の中に、小さな別の渦ができていることがわかる
燃料バットから離れたところから火災旋風が発生していることに注意
風速3m/s前後 風向 東(奥から手前)
無断転載を禁じます。上記画像は著者が著作権を所有しますが、公開は番組を企画したフジTVの了解を信義上必要とします
訂正
 番組で「火災旋風は酸素を求め動き回る」と説明があった。これは2005年頃まで一部で言われていた説で、われわれはそのような事実を確認していない。
補足
 火災旋風から逃げる方法として、「風上に逃げる」と紹介された。これは小生が番組制作者からの問い合わせに答えたもので、原則はそうだが実際問題として火災は風上から風下に延焼してくるため、風上は火がくすぶっていてとても逃げられないだろう。
 火災旋風が風下に流れるといっても数百メートルも追いかけて来るわけでは無いので、風下に逃げ延びることも不可能ではない。
 関東大震災時、被服廠跡では火災旋風が北方から南方へ移動したとの証言記録がある。気象台の記録ではこの日の風向は南だったため、火災旋風は風上に移動するとの説が有力だった。しかし、我々が何百回と実験しても、風上に向かう火災旋風は一つも確認できなかった。被服廠跡では局地的に北風が吹いていたと解釈した方が無理が無い。
 火災旋風からの逃げ方は場所により異なり、大原則と言うものが見つかっておらず、現在研究中である。一つ間違いなく言えることは、可燃物が無い不燃のビルの谷間で道が広くなければ、その間を火災旋風が追いかけてくることは無い
裏話はこちら
 上記火災旋風の模型実験 
 今回の屋外実験はすべて風洞による模型実験で確認済みの現象である。火災旋風を起こすにはスケールが小さくなればなるほど難しくなり、例えば直径数mmの火災旋風が出来そうもないことは容易に想像できる。ミニチュアで起これば実物で起こることには自信があった。 反面、ミニチュアで起こらない現象が規模の拡大により発生する恐れもあり、戦々恐々として旋風を見続けていたのも真実である。例えば燃料のヘプタンが液体のまま旋風に巻き上げられ、空中で爆発的に燃焼するのではないか、今回は杞憂であったが、このまま規模を大きくした場合、絶対に起きないと断言できる根拠が欲しい。
 現象を支配するのは基本的に浮力と慣性力の比であるフルード数である。従って大きさの相似比が風速の比の自乗に比例すると考えられ、装置の大きさを30倍にしたので風速は5~6倍で相似の現象になる。模型実験では風速0.5m/sで実験し、屋外実験では2~4mであった。ほぼ計算通りである。厳密には燃料の違い(模型メタノール、屋外実験ヘプタン)があり、それらも加味すべきである。
 小さな模型の方が大きな屋外実験より難しいのは、壁面による粘性力が無視できなくなってしまうためで、風速0.2m/s以下になると壁から5cmは無視できない境界層ができ風速が急激に遅くなり、何らかの工夫をしなければ火災旋風は発生しない。